2012年5月11日金曜日

再筆:JDとLLM - 米国ロースクール留学の夢と現実


ロースクール留学を考えるとき、まず最初に現れるのが、JDかLLMかという問題です。3年間JD課程を体験してみて、実際どう思うか、どっちにすべきかを書きたいと思います。私の通った学校のことをベースに書いているので、全ての学校に当てはまることばかりではないかも知れないということをご承知おきください。

まず再三書いているように、アメリカのロースクールには基本的にJD、LLM、SJDという3つの学位があり、JDは3年、LLMは1年、SJDは期限なし(研究が終わるまで)となっています。この期間も人によってさまざまで、早く学位がほしい人は夏休みにも授業をとって2年半ぐらいでJDを終わらせてしまう人もいるし、ゆっくり勉強したい人は4年かけても大丈夫です。夜間コースのJDは基� ��的に4年で卒業になっています。JDはJuris Doctorの略です。アメリカの大学には学部レベル(Bachelor)で法学部がないので、弁護士志望のアメリカ人は必ずこの課程を履修します。卒業すれば、アメリカのどの州においても、司法試験を受けて、弁護士資格を取得することができます。


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LLMというのはMaster of Lawsの略で、いわゆる法学修士です(なぜLが2つついているのかは不明)。JDの上の学位とされていますが、これは外国人向けとアメリカ人向けのコースに分かれています。外国人向けLLMは本当に「アメリカ法基礎」という感じで、法律英語の授業があったり、契約法や憲法の要点だけをまとめて授業があったりして、卒論も要求されません。外国の法学部を卒業した人はJD課程を修了済とみなされ、この1年のLLM課程を終わらせるだけで、ニューヨーク州かカリフォルニア州で司法試験を受けて、弁護士資格を取得することが可能です。(アメリカの弁護士資格については、こちらの記事を参照)

一方、アメリカ人向けのLLMは法律研究に重点がおかれており、JDを卒業した後に、という趣旨のコースです。卒論が要求され、社会人経験が ないと入学が難しいようです。最近は就職難のため、LLMに進学するアメリカ人JDも増えているらしいですが、このLLMというのが玉石混合で、1年かけてとったはいいが、それほど就職に有利に働かないケースも多いようです。ただ、税法など詳細な知識が要求される分野はLLMの学位が必要と聞きます。


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SJDとはDoctor of Judicial Scienceの略で、法学におけるPh.D(博士号)です。私の学校では去年初めて1人輩出し、今年も1人だけこの学位を取得しました。基本的に「本を1冊書く」というのが卒業要件になっているらしいです。学位としては新しいので、どのくらい権威があるのかは未知数ですが、本1冊出版するのは論文数本分の業績とも言われるらしいですし、学術的評価は高いんだと思います。友人が1人SJDに在籍していますが、卒業はいつになるかわからんと言っています。

ぶっちゃけLLMじゃなくJDに行く意味があるのか、という問題を考えたいと思います。まず、アメリカで弁護士になるには、LLMだとほぼ無理だと思います。これはもう間違いありません。JDでも就職難と言っているのに、LLMで就職できるわけがない。私は、LLM卒でかつアメリカで仕事され� ��いる方を何人か知っていますが、ものすごい例外です。アメリカで弁護士になりたいなら、「留学費用の節約のためにLLMに行く」というのは選択肢として存在しません。JDしかないということです。


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LLM留学のブログを見ていると、LLMはお客さん扱いされているとか、そういうふうに感じた日本人の卒業生も多いみたいですが、傍で見ている限り、LLMがJDと比較して低い扱いを受けているようには見えませんでした。JDと一緒に授業に出ていることも多かったです。ただ、在籍期間が1年というのはやはり短い。私は1年目が終わったとき、本当にJDでよかったなと思いました。勉強したい人には1年だと物足りないはずです。

JD限定の制度もあります。全て2年目以降のプログラムなので、1年で終わるLLMには受けられないのです。まず、企業や非営利団体で現場研修をするexternship(インターンと違い、お金はもらえませんが、授業単位がも らえます)。模擬裁判をするmoot court。成績上位者が編集者になれるlaw review。課外で無償の法律業務をするpro bono。そして夏の海外研修プログラム(私の学校では中国とヨーロッパ)です。これらをやっていると、就職の際のセールスポイントになります。ただ、これも個人の興味によります。企業法務をやりたいなら、moot courtとかpro bonoができるからといって、外国人がJDを選ぶ必要はあまりないと思います。


このように、別にJDだからってスバラシイ特典があるわけじゃないんですが、それでも私は3年かけてJDで勉強するのが一番いいと思います。アメリカ人向けのLLMでやるような高等な分野を学ぶにはアメリカ法の基礎が必要で、いくら日本で法律をやっていると言っても、それを一足飛びにやるのは無理があります。かといって、外国人向けのLLMでアメリカ法の基礎を1年やるだけでは面白くありませんし、本当の基礎は1年では身につかない。逆にアメリカ人のJD卒が日本の法学部で1年勉強しただけで、日本の法律を理解できるかと問われれば、答えは否でしょう。実際、JDの1年目を終わったとき、私がアメリカ法の何をわかってたかというと、何にもわかってなかったと今は思います。

も� �ろん、費用の問題はあると思います。アメリカで弁護士になるつもりはない、留学費が1年分しか工面できない、だからLLMに行く、というのを私は悪い選択だと言うつもりはありません。私がここで言いたいのは、「ベンツとカローラを比べて、確かにベンツは良い」ということだけであって、「カローラを買うな」と言ってるわけではないのです(乗ったことがないので、実際にはどうなのか知りませんが)。


裏技的な手段として、LLMからJDに接続するというのもあることはあります。私の学校ではアメリカ法基礎の授業単位である12単位がJD卒業要件の90単位から免除され、合計3年半で卒業できるそうです。しかし、LLM卒業後JDに入りなおせるかどうかはわかりません。1年在籍しているのでコネはできているでしょうが、JD入学を許可するかどうかは学校の胸先三寸です。ただ、上位校に入学するのはJDよりもLLMの方が簡単なはずなので(LSATという超難しい試験がLLM入学には課されていないため)、LLMで上位校に入ってそのままJDへというのは魅力的な選択肢かもしれません(その際にまたLSATを課してくる学校だとあまり意味がありませんが)。



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